Sweet silent night

10.一大事!?

 さすがクリスマスイヴ。
 開店直後からカフェはたくさんのお客さんで大にぎわい。
 友だちとふたりで。家族連れでワイワイ。
 そして、やっぱりカップルの子たちも多いな~。
 
 月城くんは、今日もサンタ帽で接客。
 すっごく忙しいのに疲れた顔ひとつ見せないで、まぶしいスマイルを浮かべてる。
 まさにイケメンサンタさんって感じ。
 こんなにステキなサンタがいたら、女の子たちみんなキャーキャー喜んじゃうよね。
 よしっ、あたしもお店の雰囲気盛り上げられるようにがんばろう。

 クリスマスソング・メドレーを弾きはじめると、お店に来ていたお客さんの顔が、パッと輝いた。
 『ジングルベル』や『赤鼻のトナカイ』に、『White Christmas』や『Happy Xmas 』などのスタンダードナンバー。『もろびとこぞりて』などの讃美歌も忘れずに。
 店内はクリスマスムードに包まれて、とってもいい雰囲気……だったんだけど。

「わぁーん!」
 突然、大きな泣き声が店内じゅうに響きわたった。
 ケーキのショーケースの前で、小さな女の子が大泣きしてる。
「ゴメンね、もう売り切れちゃったんだ」
 すまなさそうに女の子にあやまる月城くん。
「たべたかったのに。うさちゃん、どうしてもたべたかったのに~!」
 火がついたように泣きわめく女の子。
 これは一大事! とあたしはピアノから離れ、月城くんたちのそばに寄った。
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