婚約破棄直後の悪役令嬢と入れ替わってしまったヒロインの話

06 ヒロインの選択肢

 

「リア、今から部屋を出られる?」

 私の婚約が発表された朝食から数時間後ラーシュが現れた。普段はラーシュは学園にいる時間のはずだけど「ごめん。どうしても見せたいものがあって。夫人は出かけたから心配しないで」と珍しく扉から入ってきて私を連れ出した。

 広い屋敷の中をラーシュと歩いていく。部屋数が多くて一人で歩くと迷子になりそうな屋敷だ。

「古い書庫があるんだ。それで古い魔術を調べようと思いついた」
「入れ替わりの魔術を探すために?」
「そう。それで――」

 ラーシュは話しながら、ある部屋の前で立ち止まり重い扉を開いた。
 埃の匂いがする薄暗い書庫だ。フレイヤの自室ほどある大きな部屋は薄暗く天井まである高い本棚が並んでいた。床にも書物が散乱して長年使われていない部屋に見える。

「ここは今は流通していないような古い書物もたくさんある」
「禁忌の魔術もあったりする?」
「僕もそう思ってここを調べてみることにした。そこで僕は発見した」

 本棚をいくつか越えた先にそれはあった。
 床の書物を乱雑に避けたのか書物の山ができている箇所があり、そのすぐ近くに埃が被っていない床がある。

 ――その床には大きな魔法陣が描かれていた。

「これは……」
「見たこともない、知らない紋様だ」
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