婚約破棄直後の悪役令嬢と入れ替わってしまったヒロインの話
複雑な紋様の魔法陣は今は色褪せて黒ずんでいた。ラーシュが触れて見せるが何も起こらず、指で強くこすっても消えない。
「これは既に使用済みかしら」
「うん。しかも一度しか発動できないものらしい。色々試してみたけど黒ずんだまま消えもしない」
「もしかして」
思い当たり、ラーシュを見ると小さく頷く。
「フレイヤ様は本当に悪魔を召喚したの……?」
「悪魔かはわからないけど、彼女はここで何かを行ったんだろうね」
「この書庫にその魔術書がある?」
「いや、今日ずっと探していたけど見つからなかった。入れ替わりの魔術が記載されている書物なら厳重に隠すだろうね。
だけどこの魔法陣を残してくれたのは大きいよ。他の書物も調べて似たような紋様を探してみる」
笑顔だったラーシュの顔が真剣な物に変わり、私に向き直った。
「必ずリアの姿に戻してみせるから。僕がなんとかする」
「でも……リアに戻ったら、私は殿下と結婚することになってしまうでしょう?」
違和感を感じて尋ねるけれど、ラーシュは困ったように笑うだけで返事をしてくれない。
「ラーシュと暮らせるなら、別に私リアの姿に戻らなくてもいい……王族との婚姻なんてきっと断れないわ。それならフレイヤのままでいた方がまだ」
「いいや、父はなりふり構ってられない状態だ。どんな手を使っても嫁がせるよ」
「で、でも……」
「元の姿に戻って殿下と結婚したほうがずっといいんだ……!」
「これは既に使用済みかしら」
「うん。しかも一度しか発動できないものらしい。色々試してみたけど黒ずんだまま消えもしない」
「もしかして」
思い当たり、ラーシュを見ると小さく頷く。
「フレイヤ様は本当に悪魔を召喚したの……?」
「悪魔かはわからないけど、彼女はここで何かを行ったんだろうね」
「この書庫にその魔術書がある?」
「いや、今日ずっと探していたけど見つからなかった。入れ替わりの魔術が記載されている書物なら厳重に隠すだろうね。
だけどこの魔法陣を残してくれたのは大きいよ。他の書物も調べて似たような紋様を探してみる」
笑顔だったラーシュの顔が真剣な物に変わり、私に向き直った。
「必ずリアの姿に戻してみせるから。僕がなんとかする」
「でも……リアに戻ったら、私は殿下と結婚することになってしまうでしょう?」
違和感を感じて尋ねるけれど、ラーシュは困ったように笑うだけで返事をしてくれない。
「ラーシュと暮らせるなら、別に私リアの姿に戻らなくてもいい……王族との婚姻なんてきっと断れないわ。それならフレイヤのままでいた方がまだ」
「いいや、父はなりふり構ってられない状態だ。どんな手を使っても嫁がせるよ」
「で、でも……」
「元の姿に戻って殿下と結婚したほうがずっといいんだ……!」