婚約破棄直後の悪役令嬢と入れ替わってしまったヒロインの話
 婚約破棄されると聞いた時、正直ざまぁみろと思った。王妃にふさわしくないとも思っていた。今だって怒りも失望も消えない。
 でも自身で破滅に向かっていった彼女になんとも言えない気持ちが残る。自分自身が増やした罪をこれから幾度となく後悔するのだろうから。
 それともこの胸の痛みは数週間フレイヤ・ブリンデルとして生きた同情か。


「今頃、王城では大騒ぎだろうね」
「なぜ?」
「なぜって、そりゃ王妃となるリアが消えたからだよ。せっかちな殿下はもう『リア・ソルネ』を自分の部屋に住まわせていたらしいから、突然リアがフレイヤに変わったら驚くだろうね」

 なんだかそれはちょっと面白い。いや、面白いのかしら? 話だけ聞くとギャグに思えるけど、大変な騒ぎになることは間違いない。

「でも妬けるなあ」

 ラーシュは腕を肩に回し、私のことをじっと見た。

「なにが?」
「中身がフレイヤだとはいえ、リアのファーストキスを殿下に奪われてるから」

 ラーシュがこわごわと私に触れるから。私は目を閉じて、本当のファーストキスを待った。

「嫌なことは全部忘れていいんだよ。今回大変だったことは僕が全部覚えておいてあげるから。何も気に病まなくていいんだ、目を開けたらこれからの幸せだけ考えよう」

 優しい言葉が私を包んで、優しいキスがそっと落とされた。




 fin?



・・

読んでいただきありがとうございます!
乙女ゲームのモブに転生して頑張る話も掲載しているのでよんでいただけるとうれしいです!
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