婚約破棄直後の悪役令嬢と入れ替わってしまったヒロインの話
ただあまりにもフレイヤ様の虐めがひどすぎた。もう少しうまく隠れてやりなさいよ! と思ってしまうほどあからさまで、フレイヤ様が私を虐めているのは広く知れ渡ってしまった。
そこまでいけば、学園の中心たる王子や攻略対象が注意しないわけにはいかないし、王妃としての資格はない、と言い渡されるのは至極当然じゃないだろうか。
言葉責めや仲間外れとか、持ち物をギタギタに切り裂かれるまでなら我慢できたけど、階段から突き落とされたのはさすがにやりすぎ。断罪されるのも無理はない。
ようやく晴れてざまあ!だったというのに、このままじゃ私がざまあ!されちゃうじゃないのよ!
王子のことは好きでもなんでもなかったけれど、これからヒロインになりきったフレイヤ様がハッピーエンドを迎えるかと思うと腹立たしい。王子ルートに入れば、王妃になれるのよ!
リア(中身フレイヤ)が大聖女になっても、聖女候補だった彼女のならば役目は難なくこなせるだろうし、妃教育を受けていたから王妃になる素質もある。
でも、いじめに合っていた私が罪をなすりつけられて罰を受けて。いじめていた彼女は無罪放免で幸せになるって!
こんなスカッとしないバッド婚約破棄があってたまるか!
とわめいても。今の私は誰がどう見てもフレイヤ・ブリンデルだ。
入れ替わってる!と主張したところで誰も信じるわけがない。世間から見れば私は王子に断罪された女なのだ。
そして、私が最後に見たフレイヤ様のあの笑顔! 絶対この入れ替わりはフレイヤ様の仕業でしょ!
彼女と話がしたいけど、少しでも近づこうとするならぱ大声を出されてさらなる罪をふっかけられるかもしれない。
つ、詰んでる……!!!
絶望を感じていると部屋をノックする音が聞こえた。