私の一等星
「ありがとうございます。今度お礼をさせてください。」
教室の前でお礼を言う。そこであることに気がついた。
「そういえばお名前は?」
先輩は「あー」と一瞬空を仰いだ。
「俺は篠崎綾斗。だけどお礼はいいよ。これくらいどうってことないし、気にしないで。」
「えっ。でも…」
「まじで。俺忘れっぽいからさ、多分明日には君のこと忘れてるし。」
にじみ出る鼻がツーンとするような匂い。優しい笑顔の裏の冷たさというか、あらゆることへの興味のなさを通り越した見下すような感情に、浮ついた心が一瞬で現実に戻される。
「そうですか。でも本当にありがとうございました。では失礼します。」
まるでどこかの恋愛小説のような出会い。それに憧れるからこそこのシチュエーションで、ほんのり甘い匂いが私から漂う。
私はさっと身を翻し教室に入った。
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