一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。
エピローグ 三年後
 気が付くと、マグナスと結婚してから三年の月日が経っていた。
 最初に一年後に離婚すると言われたが、未だその気配はない。恐らく、その機会はもう一生訪れないだろう。私とマグナスは、仲が良い夫婦である。離婚なんてあり得ない。

「まあそれは、少々自信過剰といえるかもしれないけれど……」
「む? どうかしたのか?」
「ああいいえ、なんでもないわ」

 私とマグナスは、とある教会を訪れていた。ここには、私達がよく知る人達がいるのだ。
 その二人は今、腕の中にある小さな命に夢中だ。そんな二人に、私はそっと声をかける。

「イレーヌ、それにミレイナ、二人にその子を紹介できて嬉しいわ」
「お姉様……ええ、私もとても嬉しく思っています」
「私もです。まあ、私はイレーヌのついでなのでしょうけれど」
「そんなことないわ。あなただって、私の大切な友人だもの」

 教会にいるのは、私の妹のイレーヌと例の薬屋の店主ミレイナだ。
 色々と事情を考慮されて、ミレイナは執行猶予の身になった。そんな彼女は縁あって、こちらの教会に身を寄せたのだ。

「いやはや、数年の間にここも賑やかになりましたよ」
「神父、色々とありがとうございます。彼女達のことを取り計らってくれて……」
「いえいえ、教会はそういう場所ですからね。それにハワード様にもあなた方にもお世話になっています。その恩を返すのは当然のこと……」
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