花束になりたい
二番の子が帰って来て、私は舞台に足を踏み入れた。
私が登場すると、一瞬、場内がざわついた。
だけど。
私はひるまないでいよう、と決めて。
背筋を伸ばし、堂々とランウェイを歩く。
「いいぞ!頑張れ!」
誰かが大声で言う。
すると、「あれって、貝塚さん?かわいいじゃん!」と女子の声。
他のみんなも、「いいぞー!」と、声をかけてくれた。
ほんの数分。
たったそれだけの時間。
私は確かに、魔法にかけられた。
いつもとさほど変わらない、制服姿。
いつもと違う髪型。
堂々とした態度。
みんなの優しい視線を、一身に浴びて。
魔法をまとった私は、舞台袖に帰って来た。
そこには、大友くんが待っていてくれる。
「かっこよかった!!」
と、親指を立ててくれた。
今度は笑顔で頷けた。
……花束になれたみたいだった。
私は、私を。
きちんと見返すことが出来た。
そう思えた。
きっと、それは大友くんのおかげなんだ。
(好きだなぁ)
胸の中のときめきが、キラキラ光る水面みたいにきらめき出す。