知人の紹介で
「なんで借金なんてしたの?」
「……大学の友達に、皆が通ってるっていうセミナー紹介されて……」
「そのセミナーの入会金とかそんなところ?」

 優作の問いに彼女は小さく頷いた。それを見て優作は深いため息をついた。

 大方その友人とやらに騙されたのだろう。もしくはその友人も含め騙されているか。言葉巧みに金を騙し取られたに違いない。

「そのセミナーとやらには通ってるの?」
「……なくなってた」
「そのセミナー紹介した友達は?」
「……いなくなった」
「その友達がグルかどうかはわからないけど、確実に騙されてるね。詐欺だよ」

 優作がそう言い放てば、彼女は今にも泣きだしそうな表情をして俯いた。きっと彼女自身わかっているのだろう。借金だけが残って一人困っていたに違いない。

「親は知らないって話だけど、他の大人にはちゃんと相談した?」
「……してないです」
「こんなことまでして、もう君一人で解決できる段階はとっくに過ぎてるだろう。これで君の身に何かあったら、ご両親は後悔してもしきれないんじゃない?」

 そんなふうに言えば、彼女は強く眉根を寄せて厳しい表情をしている。親を心配させる行為だと自覚しているのだろう。

「はあー。今すぐ親に電話しなさい」
「え……」
「電話して全部事情を話しなさい。もしくはここに親を呼びなさい。事情を聞いた以上放ってはおけないから、君が俺の前で親に話すのを見届けるまでここにいる」
「でも……」
「親を悲しませたくないのなら、言う通りにしなさい」

 優作が強く言えば、彼女は渋々といった様子で電話をかけた。電話口で全部を話すことは難しいようで、彼女はこの場に親を呼ぶ選択を取った。
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