知人の紹介で
 しばらくは二人とも何も言えずに沈黙が流れる。未だ志信から視線を逸らせない。静かに見つめ合う中、先に沈黙を破ったのは志信だった。

「元宮さん! 僕、元宮さんが他の人を好きになるって思ったら、ものすごく悲しくて淋しい気持ちになった。元宮さんと離れるのが嫌だって思った。きっと元宮さんが好きなんだと思う。僕、元宮さんに恋をしてる」

 志信に好きだと言われれば、自分でも信じられないくらいの喜びに支配されていく。そして、衣月も同じように志信が好きなのだと、じわじわと実感が湧いていく。

「私も。安藤くんと離れるのは嫌だ。私も安藤くんがきっと好き」
「じゃあ、これって両想いってことでいいのかな?」
「いい、と思う」
「じゃあ、僕たち恋人になっていいってこと?」

 恋の定義を考えるのにいっぱいいっぱいでそこまでは考えられていなかった。自分の想いが恋なのかどうかばかりを気にしていたが、二人の想いが向き合っているのなら、恋人という新しい関係になることも考えていいわけだ。恋すらよくわからなかった衣月だから、恋人というものもまだよくはわからないが、それでも志信とその特別な関係になりたいのだと衣月の心が叫んでいる。

「……うん。いいと思う。私は安藤くんの恋人になりたい」
「僕も。僕も元宮さんの恋人になりたい。僕の恋人になってくれる?」
「うん。安藤くんの恋人にしてほしい」
「じゃあ、今日から僕たちは恋人ってことで」
「うん、恋人……どうしよう。こんなに嬉しい気持ちは初めてかもしれない」

 目の前にいるこの人と特別な関係になったのかと思うと恐ろしいくらいの嬉しい感情が湧いてくる。もう嬉しくてたまらなくて、もはや苦しくて、息も止まってしまいそうだ。

「僕も。心臓はドクドク鳴ってて大変なことになってるけど、ものすごく嬉しい。ありがとう、元宮さん。これから、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」

 二人してお辞儀し合う。ここから新しい関係のスタートだ。
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