知人の紹介で
「お互いと離れてるときに、相手のことを考えることはある?」
「「ある」」

 衣月と志信の声がきれいに重なる。

「相手に触れてみたいって思う?」
「「思う」」

 また重なる。

「じゃあ、今、二人で数秒間目を合わせてみてドキドキする?」

 志信の目を見つめ、志信からも見つめられれば、衣月の心臓はトクトクと速いリズムを刻みはじめた。

「「する」」

 また同じ回答をしたことで、志信もドキドキしているのだとわかる。なぜだかそれを知ると衣月の鼓動はさらに速くなった。

「それじゃあ、相手に自分以外に好きな人がいるって言われたら、どういう気持ちになる?」

 その質問には衣月も志信も答えなかった。いや、正確には答えられなかった。志信が他の人を好いていると想像すると、とても苦しくて悲しくて淋しい気持ちになる。あまりにも苦しくて口になんて出せなかったのだ。

「お前ら、今、お互いの顔見てみろ。随分と苦しそうな顔してるぞ? 自分以外の誰かが好きなんて嫌なんだろ」

 俯いてしまった顔を上げ、志信のほうへ目を向けてみれば、志信もとても苦しそうにその表情を歪めている。互いに苦しい表情を浮かべたまま、互いから目を離せない。

「それで恋じゃなかったら驚きだよ。まあ、俺が決められる話ではないから、あとは自分たちで恋にしたいかどうか考えてみろ。友達の関係でいたいのか、それとももっと深い関係になってみたいのか、二人でよく話し合え」

 圭吾はそれだけ言い残して去っていった。あとには未だ苦しい表情を浮かべる衣月と志信だけが残された。
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