知人の紹介で
 そうして二人は親に結婚の挨拶に行くという連絡を入れ、まずは高原家へ結婚の許可をもらいにやってきた。なぜか真由美の両親はあっさりと結婚を認めてくれたが、二人の馴れ初め話を正直に話そうとする真由美に圭吾は本当に冷や汗をかいた。ナンパを断り切れなかったなんて言えば、心象が悪くなるのではないかと思ったのだ。

「真由美さん、さすがに全部正直に言うと心象悪くならない?」

 真由美にだけ聞こえるように小声でそう伝えれば、真由美はそれが理解できないとでも言うように首を傾げている。

「なんで? なるわけないじゃん」
「でも……」
「大丈夫だから」

 真由美はそう言うと、もう圭吾の制止は構わずにあの日の出来事を語りだしてしまった。

「あのね、前にうちの会社でナンパを内定者に強要するどうしようもないやつらがいたんだけどさ――」

 圭吾はもう気が気じゃなくて、嫌な意味で心臓をドクドクと跳ね上がらせながら、真由美が語る話を聞いていた。悪いことはしていないが、先輩たちに立ち向かえなかったところを情けなく思われると困る。娘を預けるに値しないなんて思われたらどうしようとまで考えてしまったが、意外にも真由美の両親の反応は悪くなかった。

「まあ、じゃあ、真由美のこと助けてくれたのね。本当にいい人だわ」
「え? あの、でも、上手く断れずに真由美さんに声をかけてしまって……」
「あら、ナンパしたわけではないんでしょう? 真由美のことも心配してくれたわけでしょう?」
「はい」
「思いやりのあるいい人じゃない。ねぇ」
「だよねー。むしろ私がそのときビビっときちゃってさ、人事の同期に頼んで、入社式の日に無理やり圭吾くんに会わせてもらったんだよね。そこからは私がグイグイ押しちゃった」
「まったくこの子は……もうこんな娘だから、嫌なことがあるときははっきり言ってやってくださいね」

 結局、出会いも含めすべてを認めてもらえて、圭吾はほっと一安心した。

 次の日には圭吾の家へも二人で赴き、岡倉家からも結婚の承諾を得た。あとはもう結婚へ向けて進むばかりだ。
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