知人の紹介で
 純花が湊斗の家庭教師をすることになったのは、母方の伯従母=母の従姉妹である花枝おばさんの紹介だった。

 湊斗の母親が花枝おばさんの開いているフラワーアレンジメント教室に通っており、そこで湊斗のことを口にしたらしい。そのときに、湊斗の志望大学が純花の通う大学であると知った花枝おばさんが純花を紹介したという流れだ。

 当時、純花はまだ大学に入学して半年も経たない頃で、バイトもしてはいなかったから、その依頼を快く引き受けた。


 そうして初めて湊斗の家を訪れてみれば、そこにいたのは、前髪を深く下ろし、黒縁の眼鏡をかけ、ずっと俯いて下を見ている、如何にも暗い印象の男の子だった。
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