知人の紹介で
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「私も最初は家庭教師と生徒だったことに引け目を感じてたんだよね。でも、湊斗くんが、私に家庭教師をしてもらっていたことは恥じることじゃなくてとても大事な想い出で、自分を合格に導いてくれたのはとても誇らしいことだって、言ってくれてね。それで私も変に隠さなくてもいいかなって思うようになったの。実際、付き合いだしたのは家庭教師の役目を終えたあとだったしね」

 純花がそんなふうに自分の心境の変化を語れば、千景はうんうんと頷いている。

「私も別に気にしなくていいと思うよ。まあ学校の先生と生徒とかだったら、ちょっとどうかなって思う気もするけど。だって教師って言ったってただの大学生じゃん。たった二歳しか違わないんだし、外野がそんなにわーわー言うことじゃないでしょ」
「そうかもね。まあ、親の心配もよくわかるから、結婚式の紹介では親の意見を聞いておいたけどね」
「南条は割と堅いタイプだもんな。でも、この中だと南条は至って普通の出会い方だよ」

 圭吾がそう言えば、千景はまたもやうんうんと頷いている。

「本当にそうよ。うちなんて絶対に口が裂けても人様に言えないから」
「お前の場合は、全部自分が悪いんだろ」

 圭吾のその台詞に千景はキッと圭吾を軽く睨んでみせた。
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