知人の紹介で
「申し訳ありませんでした。それからこの間は助けていただきありがとうございました。こちらお詫びとお礼の品です。どうかお受け取りください」

 和巳に向かって持っていた品を差し出す。和巳はまたちらりとだけ千景のほうに視線を向け、淡々とした声で「目立つから座ってくれ」と言い放った。

 差し出したものはまだ受け取ってくれていないが、ひとまず話を聞いてくれる雰囲気にはなったから、千景は「失礼します」と言って和巳の目の前の席へと腰かけた。

 今度はテーブルの上に品物を置き、「どうか受け取ってください」と言って和巳へと差し出す。そして、そのままこれまでの出来事に対する謝罪の言葉とお礼の言葉を改めて口にした。

「まずは、勘違いとはいえ、あなたにひどい罵声を浴びせたこと申し訳ありませんでした。それからこのカフェで騒ぎを起こして、ご迷惑をおかけしたことも申し訳ありません。あのときは場を収めてくださってありがとうございました。そして、先日の件も本当にありがとうございました。あなたがいなかったらどうなっていたか……本当に本当にありがとうございます」

 和巳に対して深々と頭を下げる。とにかく謝罪と感謝の気持ちだけは伝わってほしいとそのままの姿勢でいれば、目の前の和巳が軽く息を吐いたあとにその口を開いた。

「わかった。謝罪は受け入れよう。だが、もうあんな暴走はしないでくれよ? 今後君が困っていようと俺はもう関わるつもりは一切ないからな」
「もちろんです。本当に申し訳ありませんでした」

 千景は一度上げた頭を再び深く下げて謝罪した。そして、すぐに席を立った。

 和巳が千景の気持ちを受け取ってくれたのはわかったから、これ以上長居する意味もない。和巳ももう何も言いそうにないから、千景はさっさとカフェをあとにした。
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