授かり盲愛婚。 〜ハイスペ紳士とラグジュアリ一な一夜を過ごしたら、愛の結晶を宿しました。〜



 私、滝脇(たきわき)史菜(ふみな)は由緒正しい名家で旧新華族・滝脇家の末裔である祖父に持つ一人娘だった。

 滝脇家が一族経営していた高級呉服屋で、過去の栄光に縋り過ぎた祖父が赤字にも関わらず生活水準を下げることができず借金だけが膨れ上がり廃業……それが、私が大学卒業の頃だ。

 没落令嬢になった私はもちろん住んでいた家を出て行くことになりベリが丘から出て行こうと思ったが、駅近の会員制オーベルジュの中にあるレストラン【桜翠(さくらみどり)】で働いている友人に寮付きの守衛の女性スタッフ募集の求人を教えてくれたのがきっかけで……今に至る。


「じゃあ、滝脇さん。巡回してくるねー」

「あ、はい。わかりました」

「あ、今から椿谷(つばきや)さんだから頑張ってね」


 椿谷さんとは、唯一のベテランスタッフのこと。

 今は女性スタッフを積極的に採用しているが、昔は男性社会だったらしい。苦労したからか厳しい人だ。


「ありがとうございます……」

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