人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
客人
ヴァイオレットは、リオンとアイリスと共に廊下を走る。ランカスター家で家庭教師に毎日のように「淑女は走ってはいけません!」と言われ続けていたものの、そんな教えはヴァイオレットの頭からすっかり飛んでしまっていた。それほどまでに、彼女は今動揺している。

(どうして、王子様がここにいらっしゃるの!?)

いくら、ブルースター家が王室との繋がりが深いとはいえ、通常は王家の人間がわざわざ屋敷に来ることはない。王家の人間は、城の外に出ると命が狙われる可能性があるためだ。

本来ならば、イヴァンたち貴族がさ城に出向くのが一般的である。それは非魔法家系ですら知っている常識だ。そのため、ヴァイオレットは混乱してしまっている。

(本当に王子様が来ているの?王子様の従者ではなく?)

応接室の前にヴァイオレットが立つと、部屋の中からは楽しそうに話す声が聞こえてくる。イヴァンの笑い声に、ヴァイオレットは驚く。

(イヴァン様、こんなにも笑う方だったの?)

ヴァイオレットが知るイヴァンは、いつもどこか悲しそうな顔か、微笑むだけだ。ヴァイオレットは偽りの妻になって一ヶ月経つが、笑い声を初めて聞いた。
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