両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
ぽつりと小さな音がした。緑の葉の上に水滴が落ちる音だと気付き顔を上げる。空を覆う雲から、静かに雨が降り出したようだ。
私たちは東屋の中のベンチに並んで座り、庭の木々が雨で濡れていくのをぼんやりと眺める。雨に打たれ揺れる緑は鮮やかで美しかった。
「……それに、兄貴はうちのおやじたちに遠慮しすぎなんだよ。バカ真面目に言われたことに従って」
不満をもらした悠希に、「どういう意味?」とたずねる。
「翔真さんはご両親に遠慮してるの? 家族なのに?」
「彩菜は不思議に思わないのか? 兄貴だけ親と話すときに敬語なの」
翔真さんはご両親と話すときも敬語を使う。小さなころは普通に話していたのに。
彼がご両親に敬語を使うようになったのは、高校生のころからだったと思う。不思議に思い翔真さんに『どうしてご両親とは敬語で話すんですか?』と聞いたことがある。
「前に翔真さんに聞いたら、『吉永自動車に入社すると決めたときから、一社員としてのけじめをつけるために敬語で話すことにしたんだ』って言ってたよ」
「それにしても、他人行儀すぎだろ」
たしかに。社員としてのけじめのためなら、敬語を使うのは仕事中だけでいいはずだ。プライベートでも敬語だなんて、わざと距離を置いているみたいだ。
私たちは東屋の中のベンチに並んで座り、庭の木々が雨で濡れていくのをぼんやりと眺める。雨に打たれ揺れる緑は鮮やかで美しかった。
「……それに、兄貴はうちのおやじたちに遠慮しすぎなんだよ。バカ真面目に言われたことに従って」
不満をもらした悠希に、「どういう意味?」とたずねる。
「翔真さんはご両親に遠慮してるの? 家族なのに?」
「彩菜は不思議に思わないのか? 兄貴だけ親と話すときに敬語なの」
翔真さんはご両親と話すときも敬語を使う。小さなころは普通に話していたのに。
彼がご両親に敬語を使うようになったのは、高校生のころからだったと思う。不思議に思い翔真さんに『どうしてご両親とは敬語で話すんですか?』と聞いたことがある。
「前に翔真さんに聞いたら、『吉永自動車に入社すると決めたときから、一社員としてのけじめをつけるために敬語で話すことにしたんだ』って言ってたよ」
「それにしても、他人行儀すぎだろ」
たしかに。社員としてのけじめのためなら、敬語を使うのは仕事中だけでいいはずだ。プライベートでも敬語だなんて、わざと距離を置いているみたいだ。