両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
「兄貴は両親の理想の息子であろうと努力し続けて来たんだよ。弟の俺から見ても、常に周りの意見を優先して自分の気持ちを押し殺しているように見えた」
「そんな……」
「兄貴がわがままを言ったのは、俺が覚えている限りたった一度だけだと思う」
「翔真さんは、どんなわがままを言ったの?」
「お前との結婚が決まる前のことだけど」
 悠希の前置きにうなずく。
「兄貴にはずっと好きな人がいて、その相手と結婚するためにって……」
 予想外の言葉に、「待って」と悠希の腕を掴んだ。
「翔真さんには好きな人がいたの?」
「は? お前、知らなかったのか?」
 悠希が驚いたように私を見る。
 そんなの、知らなかった。
 お互いの家のための政略結婚を受けたくらいだから、翔真さんには想いを寄せる人もお付き合いしている人もいないと思ってたのに……。
 私が息をのんだとき、靴音が聞こえた。振り返ると傘をさした翔真さんが歩いてくるのが見えた。
 雨が降る美しい庭を歩く彼はものすごく素敵で、まるで映画のワンシーンのようだった。私は呼吸を止めて、その姿を見つめる。
「翔真さん……」
「雨が降り出したから、迎えに来たよ」
 彼は私に優しく笑いかけてくれる。けれど私は動揺していてうまく笑い返せなかった。
「小雨なのに過保護だな」
< 103 / 191 >

この作品をシェア

pagetop