両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 撮った写真を確認させてもらうと、画面の中の私は柔らかく微笑んでいた。あんなに緊張していたのに、自然な表情を浮かべた一瞬を切り取ってくれたんだろう。
 どちらかというと頼りなく見られがちな私だけど、写真に写った私は知的で上品な印象だった。
 胸の下まである栗色の髪と柔らかい質感の細身のワンピースがとても綺麗に見えて、プロの技はすごいなと感心する。
 私、藤沢彩菜は吉永自動車の広報部で働く二十七歳。普段からテレビや雑誌などのメディア対応をしているけれど、こうやって自分のことを取材されるのは初めてだった。
 今回出版社から、ファッション誌の働く女性の私服を紹介するコーナーで吉永自動車の女性社員を紹介したいという依頼が来て、広報で働く私に白羽の矢が立ったのだ。
 目立つのは苦手なので辞退しようと思ったけれど、部長から『若い女性へのPRになるから頼む』とお願いされ、断りきれずにうなずいた。
 写真の撮影を終えた私たちはショールームの奥にあるカフェスペースに移動し、女性編集者の園田さんの質問に答える。
「今日の藤沢さんの服装は、シンプルなワンピースに上品なアクセサリーがとてもおしゃれですよね。私服のこだわりについておうかがいしてもいいですか?」
「実はあまり服にこだわりがなくて、人からいただいたものを身に着けることが多いんです」
「じゃあ、そのピアスやネックレスも?」
< 4 / 191 >

この作品をシェア

pagetop