両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 休日に私を連れて出かけるとおしげもなく服や靴を買ってくれ、なんでもない日に贈り物をしてくれる。
 私の話を笑顔で聞き、作った料理をおいしいと食べてくれるし、食事の後片付けも率先してやってくれる。
 一緒にいて楽しいし、幸せだと思う。欠点なんてひとつもない、完璧すぎる旦那様だ。
 ただひとつ、肉体的接触がいっさいないことをのぞけばだけど……。
「――翔真さんは、私を抱く気がないのかな」
 パジャマに着替えた私は、洗面所で歯を磨きながらそんなひとりごとをもらした。
 コップの水で口をゆすぎ、鏡に映った自分を見てため息をつく。
 翔真さんはあれだけ魅力的な人だから、恋愛経験も豊富だろう。今まで何人もの素敵な女性とお付き合いをしてきたに違いない。
 だから、経験も知識も色気もない私なんか抱く気にはなれないのかもしれない……。
 そんな想像をして落ち込む。
 だけど、私に触れないからといって、翔真さんが外でほかの女性と会っている気配もなかった。
 じゃあ、彼にはそういう欲求がないとか?
 ひとり頭を悩ませていると、「そんなむずかしい顔をして。どうかした?」と声をかけられた。
 驚きのあまり「ひっ」と声をもらす。
 洗面所のドアを閉め忘れていたんだろう。翔真さんが廊下からこちらを見ていた。
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