両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
「あのころはまだ子どもだったんだよね。憧れの翔真さんに異性として見てもらいたくて、一生懸命だったなぁ」
 懐かしくてため息をつくと、悠希に鼻で笑われた。
「それは今でも変わってないじゃん。兄貴の前だと緊張して真っ赤になる癖まだ治ってないんだろ?」
 痛いところをつかれ「うるさいなぁ」と顔をしかめる。
「とりあえず、うちには泊められないから違う場所を探してね」
「あーぁ。結婚して彩菜は冷たくなったな。ひさしぶりに兄貴と男同士でゆっくり話でもしようと思ったのに」
 ふてくされた顔を見て、罪悪感がわいてくる。
 私が翔真さんに抱いてもらいたいから、という理由で勝手に断ってしまったけど、翔真さんに聞いてから決めたほうがよかったかな……。
 そんなことを考えていると、悠希がカウンターに肘をつきキッチンをのぞきこんだ。
「腹減ったんだけど、まだカレーできないの?」
「そんなすぐできるわけないよ。早く食べたいなら、見てるだけじゃなくて手伝って。こっちに来てリンゴをすってよ」
「えー。俺が?」
「隠し味にリンゴを入れてほしいんでしょう?」
 強引に悠希をキッチンに呼び、リンゴとすりおろし器を手渡す。
「すりおろすの面倒くさい。ふつうに切ればよくない?」
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