両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
「なに言ってるの。お仕事で疲れてる翔真さんに手伝いなんてさせられないから!」
「えー。俺だって時差と長時間フライトで疲れてるんだけど。兄貴と俺に対する扱いが違いすぎない? 贔屓だ」
「翔真さんを贔屓するのは当然でしょう!」
 そんな言い合いをしていると、翔真さんが「俺でよければ手伝うよ」と言ってくれた。
 ジャケットを脱ぎキッチンへとやって来る。
 背の高い彼が私の隣に並び、シャツのそでをめくり手を洗う。その姿を見て、思わず「んん……っ!」と声をもらしてしまった。
 シャツにベスト姿の翔真さんがキッチンに立っているというレア感、たまらないんですけど……!
「どうかした?」
 私の反応を不思議に思った翔真さんにたずねられ、「い、いえ。なんでもないですっ」と取り繕う。
「リンゴをすればいい?」
「はい。あの、手をケガしないように気を付けてくださいね」
「大丈夫だよ」
 翔真さんは心配する私に笑いかけ、リンゴとすりおろし器を手に取る。私が冷蔵庫の中から食材を取り出していると、「あ」と小さく声をもらした。
「ネクタイを外せばよかった」
 翔真さんはそう言って自分の首元を見る。ベストを着ているとはいえ、かがむとネクタイが少し邪魔そうだ。
「はずしてやろうか?」
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