鏡と前世と夜桜の恋
雪美の名を口にした刹那、咲夜の表情がはっきりと変わり陽菜の腕を掴む… 陽菜の口元がニヤリと歪む。
(かかった)
そう言いたげな、勝ち誇った顔。
だが――
咲夜は何も言わず、懐から布切れを取り出し、ためらいなく陽菜の口を塞いだ。
「…んっ、っ…!」
抵抗はすぐに力を失い身体が、ぐらりと崩れ落ちた。
眠りに落ちた陽菜を、咲夜は静かに抱き上げる。その顔を冷たく見下ろし鼻で笑った。
「… ゆきには指一本触れさせない」
そう呟き、咲夜は再びおすずの屋敷の闇へと戻っていった。
「どうしたんだい陽菜!?」
咲夜の腕の中の娘を見て、おすずは声を上げる。
「体調が悪くなり倒れたから運んだ、今は寝ている、そっとしておけ」
咲夜は感情の欠片もなく言った。
「あれまあ咲夜さんも腕を怪我してるじゃないかい、手当てしてやるから部屋に来な」
おすずは、咲夜の腕に目を留め口の端を吊り上げる。
「いい、このぐらい。俺は今から街に用がある」
即座に答えた、その瞬間。
「いいから、来るんだよ!!」
獣じみた声と共に腕を掴まれ抵抗する間もなくおすずの部屋へと引き摺り込まれる。
「な、なんだ… 離せ… 」
床に押し倒され、天井が歪んで見えた。おすずの影が覆い被さると同時に咲夜の身体に舌が這う…
「咲夜さん、陽菜があれなら私も孕ませておくれよ〜 蓮稀様じゃ孕めなかった、蓮稀様は使い物にならないからね」
それ以上、言葉は続かず、おすずは咲夜の反応しない自身を無理矢理入れようとする。
「ほら早く勃たせな!!」
「ゆき… 」
咲夜の意識は遠のきながらもただ1つの名に縋りつくと、咲夜の自身は反応し、それに気付いたおすずは " 自分じゃないと " 怒りのあまり何度も何度も咲夜を殴る。
「いい加減にしな、またあの小娘の名を出すのかい… !!! 」
「見たか、ゆきと名前を呼ぶだけで俺の身体は反応するんだ、ゆきが乱れたら俺なんか直ぐに達するだろう」
くすくす笑いながら悔しそうな顔をするおすずに嫌味を言い楽しむ咲夜。
「もう辞めろ、諦めろ、俺がどれだけゆきを大切にしてきたか分かっただろ」
おすずはムキになり咲夜の上で腰を振る。
「咲夜さんがどれだけあの小娘を大切にしようがあの小娘はあんたじゃなく申又や蓮稀様を選んで受け入れたのに、それを知らずに健気だねえ〜」
ゆきが蓮稀と?いつそんな関係になった?そんなこと聞いたことが無い。咲夜は、真実を知り複雑な思いを押し殺しながらもカッとなりおすずを突き飛ばす。