鏡と前世と夜桜の恋
その足で咲夜が向かった先は、陽菜の待つおすずの屋敷だった。
「お帰りなさぁい、咲夜さん❣️」
優しく迎える陽菜は、咲夜にぴっとり寄り添いながら微笑む。
「咲夜さーん待ちきれない。早く本当の夫婦になりたいの。そう、子どもも欲しいわ… 咲夜さんとの切れない繋がり!これでもう咲夜さんは私だけのもの」
咲夜の瞳はもう何も映していなかった。
「咲夜さんとの繋がりは大切だから… 何ひとつとして咲夜さんとの繋がりだけは私が管理しないと駄目なの」
咲夜は聞いているようで聞いてない、ただ遠くを見ていた。
「欲しい… 子供が欲しい… 欲しい欲しい欲しい!!!もう二度と私から逃げられないように。咲夜さん直ぐ出かけるから… 本当はそれも辞めて欲しいくらい。咲夜さんはずっとここに居るの!もう私だけの所有物になったんだから」
心を置き去りにした人形のように冷たい瞳、それでも表情だけは優しく微笑み、陽菜の願いを静かに受け入れ、頷くフリをする。
「… ごめんな」
誰にも気づかれないように。
雪美への想いを胸の奥深くへ閉じ込めたまま、咲夜はこの家に縛られた男として歩き始める覚悟を決め、雪美の幸せを願った。