鏡と前世と夜桜の恋
そして夜。
屋敷中が静まり返るのを待ち、足音を殺して廊下を歩く。
申又に繋がる証拠。
蓮稀の力になれるもの。
隠された文、密書、人の動き。
小さな手掛かりを一つずつ集め、誰にも気付かれぬよう元の場所へ戻す。
もし見つかれば、命はない。
それでも雪美は怖くなかった。
すべてが終われば、咲夜と笑って暮らせる日が来る… その希望だけが、雪美を支えていた。
今夜も証拠探しの後、雪美は再び森へ向かう。
月明かりだけが照らす細い獣道。
梟の鳴き声が響く夜でも、その足取りは迷わない。
森の奥では、灯りを一つだけともした咲夜が待っている。
戸が静かに開く。
「… おかえり」
「ただいま!」
誰にも聞こえない、小さな夫婦のような言葉、二人は寄り添い互いの温もりを確かめる。
一緒にいられるのは、ほんのわずかな時間… それでも、その短い時間があるから明日も生きられる。
人には祝福されなくてもいい。
豪華な屋敷も身分もいらない。
朝になれば隣で笑い、夜になれば同じ家へ帰り、一緒に寝る。
二人が願う幸せはそれだけだった。
それ以上は求めない、誰が何を言おうと、誰を敵に回そうと、この幸せだけは絶対に奪われたくなかった。