鏡と前世と夜桜の恋
" 今日という日は、今日しかない "
知らぬ間に、雪美の足は屋敷よりも森へ向かうことが増えていた。
夜更けになるのを待ちきれず、少し早く屋敷を抜け出す日もある。
咲夜もまた、雪美が来る時間になると仕事の手を止め、家の外へ出て待つようになっていた。
二人は幸せだった。
だからこそ、気付かなかった。
当たり前になればなるほど、周囲への警戒も緩くなる… 今の雪美と咲夜には、短い時間でもこうやって会うことだけが生き甲斐にまでなっていた。
「ゆき… 立ってないで座れば?」
「う、うん// 」
咲夜は愛おしそうに微笑み雪美の腕を掴めば自分の膝の上に座らせる。
「ゆき… 俺の大好きなゆきだ… 」
膝の上に座った雪美の頰に触れ幸せそうに微笑む咲夜… 咲夜の声を聞いた瞬間、雪美の胸はいっぱいになった。
言葉より先に互いの手が重なる。会えなかった時間など、最初からなかったかのように。
薪の燃える音に淡い灯り。
窓の向こうには、深い夜と静かな月。
「さく… 」
雪美の目には幸せから涙が浮かんだ。
「な、何故泣く、俺が泣かせたのか!?」
「… 幸せ過ぎて」
ずっと隠してきた想い、誰にも知られてはいけない恋… それでも今だけは何も怖くなかった。咲夜はそっと雪美を押し倒す。
「ゆき」
「… う、うん// 」
「… 本当に、俺でいいのか」
雪美は答える代わりに、咲夜の胸へ身を寄せた。
「さくがいいの!!」
その言葉に咲夜は目を伏せる。そして二人は、長い間言えなかった想いを、何度も確かめるように口づけを交わした。
触れる指先も、重なる鼓動も、すべてが愛おしく雪美は目を閉じた。
今夜だけは、この人のそばにいたい…
咲夜に触れられる度、胸の奥から幸せが溢れてくる。
「… ずっと、こうなりたかった」
雪美が小さく呟く。
咲夜は髪を撫でながら、少し拗ねたように言った。
「俺も。ただ初めてくれるって約束したのに、違う男に抱かれやがって… 」
「… それ、まだ言うの?」
雪美が涙の跡を残したまま笑う。