鏡と前世と夜桜の恋
「言う、忘れられるわけがないだろ!」
「ごめんなさい… 」
「… もういい」
咲夜はそう言って雪美を抱き寄せた。
「今夜はここにいろ、それだけでいい」
雪美もその胸に頬を寄せる。
「うん… 」
「ゆき、愛してる」
「私もさくのこと、どうしようもないくらいに愛し… んっ… さく… // 」
外では風が木々を揺らしていた。
けれど、二人のいる部屋だけは、不思議なほど穏やかで二人の甘い吐息がいつまでも重なっていた。
" この幸せがずっと続きますように "
この願いは誰にも知られては行けない… それでも二人の心の中ではこの願い、永遠に変わることはなかった。
その夜。
二人は誰にも知られることのない場所で、互いの愛を確かめ合った。言葉にならない想いを抱きしめる温もりに託して。
やがて灯りが消え、月明かりだけが寄り添う二人の姿を静かに照らしていた。

それは長い間、胸の奥にしまっていた恋がようやく二人だけのものになった夜だった。
「そろそろ戻らなきゃ… 」
「また待ってる」
咲夜にそう言い残し雪美が申又の屋敷へ戻ると、廊下の角に人影が立っていた。
「… 誰?」
声を掛けると人影は静かに姿を消す " 気のせい? " そう思った雪美は、そのまま部屋へ戻った。
その廊下には新しい足跡が残っていたことを、雪美は知らない…