鏡と前世と夜桜の恋

その頃、雪美は

雪美は申又に命じられ、街へ使いに出ていた。

人の往来が絶えない京の町。

ようやく用事を終えた雪美は、帰る前に小さな団子屋へ立ち寄った。







店先から漂ってくる甘い香り。

「… お団子」

団子を目の前に思わず頬が緩む。

雪美にとって、団子は昔から大好きなものだった。

腰を下ろし、しばらく待っていると、湯気を立てた出来立ての団子が運ばれてきた。

「お待たせしました」

「ありがとうございます」

雪美は嬉しそうに箸を取った。

一本、手に取る。

いつもの甘い香りの団子… なのに

「… あれ?」



突然、胃の奥から何かが込み上げてきた。

「うっ… 」

雪美は慌てて口元を押さえる。

胸の奥がむかむかする。

「なに… これ… 」

しばらく目を閉じ息を整える。けれど、団子を見ただけで、またじわじわと吐き気が込み上げてきた。

「… どうして?」

大好きなお団子なのに。







今日はどうしても口に入れられない… 雪美は不思議そうに団子を見つめた。

そして、ふと頭に浮かんだ。

――まさか。

「… 妊娠?」

声にならないほど小さく呟く。

その瞬間、胸が大きく鳴った。

思い当たることはあった。
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