鏡と前世と夜桜の恋

その笑顔を見た瞬間… 雪美の胸に張りつめていたものが、崩れた。

「… さく」

「ありがとうゆき、幸せ過ぎるよ俺 」

「 …私、今日は帰らない」







咲夜は少しだけ目を見開いた。けれどすぐにその意味を理解する。

「俺は、凄く嬉しいよ」

そう言ってから、雪美の傷を見つめる。

「でも… 1日開けて大丈夫なのか?」

雪美は小さく頷いた。

「うん… 」

帰ればどうなるのか… 申又にさくとの子がいると伝えた以上、考えるだけで身体が震える。



雪美は咲夜の胸元をぎゅっと掴んだ。

咲夜は何も聞かず、雪美の背中に腕を回したまま片手はそっと雪美の頭を撫でた。

「じゃあ、今日はここにいて」

その言葉が、雪美には何よりも嬉しかった。

二人は静かに部屋へ入る…

咲夜はまず、雪美の傷の手当てを始めた。



その手つきは驚くほど優しかった。

「痛かったら言えよ?」

「… うん」

「我慢しなくていいからな」

雪美は黙って咲夜を見つめた。

傷に触れるたび咲夜の顔が苦しそうに歪む、まるで自分が傷つけられたかのように… やがて手当てを終えると、咲夜は雪美の前に座る。


何かを確かめるように雪美の腹にそっと手を伸ばす…

大きくなったそこへ、掌を置いた。

「… ここにいるんだな」

咲夜の声が震えた。

「俺と… ゆきの… 」

言葉の続きを、咲夜は言えなかった。愛おしそうに雪美の腹を撫で… 目から一粒の涙が落ちた。

雪美は驚いた。

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