鏡と前世と夜桜の恋
「そうだ、名前も決めないと!きっとゆきに似た可愛い女の子が出てくるんだよ」
「さくに似たらカッコよくなるね?」
「なっ… // 女だよ絶対!」
照れ臭そうな咲夜の肩にそっと頭を預け雪美は静かに目を閉じる。
今夜だけは
未来のことを考えなくてもいい。
怖いことも辛いことも全部忘れて…
ただ――。
愛する人の隣で、二人の子どもと一緒に。
幸せでいていい。
雪美はそう思った。
そして咲夜もまた、同じことを願っていた。
小さな灯りの下。
二人は涙を流しながら、まだ見ぬ我が子を、二人だけの腕の中で抱きしめるように寄り添っていた。
この幸せはまだ始まったばかり…
「…なあ、ゆき」
「なに?」
咲夜は暫く雪美の腹を眺めていたが、ふっと口元を緩めた。
「どんな子になると思う?」
雪美は一瞬きょとんとした。
それから、くすりと笑う。
「気が早いわよ。そうね、咲夜に似たらかっこいいけど大変そう… 」
「なんでだよ」
「だって、頑固だもの」
「ゆきだって十分頑固だろ?」
二人は顔を見合わせ同時に笑った。そして、雪美は自分の腹へそっと手を置く… その仕草には愛おしさがあった。
「女の子だと可愛いだろうな… 」
「女の子なら髪を結ってあげて可愛い着物を着せて、一緒に団子屋へ行くの!素敵でしょ?」
「食べるのは団子だけか?」
「ふふ、さくが買ってくれるんでしょう?」
「俺かよ」
「父親になるんだもの」
その言葉に、咲夜は少し照れたように顔を背けた。
「… 父親、か」
「嫌?」
「いや」
咲夜は小さく首を振った。
「むしろ… なってみたい」
雪美は嬉しそうに微笑んだ。