鏡と前世と夜桜の恋
「男の子だったら?」
「男なら俺が色々教え込む!」
「何を?」
「知識や剣術」
「駄目」
「即答かよ」
「危ないものは持たせません」
「じゃあ釣りは?」
「それならいいわ」
「あと、山へ連れて行って… 」
「それも駄目」
「なんでだよ」
「さくは無茶するから」
また二人で笑った。
やがて笑い声が静まると、雪美は改めて咲夜の肩へそっと寄りかかった。
「… ねえ、さく」
「ん?」
「この子が大きくなったら… 私たちのこと、仲のいい夫婦だったって思ってくれるかな」
咲夜は少しだけ驚いた顔をした。
そして、雪美の手に自分の手を重ねる。
「思ってもらえるよ、なんたって俺はゆきのこと誰よりも愛してるからな!」
「私の方が愛してるもん」
「ほーら自分の方がってまた頑固が出た」
「違う!!」
「可愛い、それでこそゆきだ」
「もう… 約束ね」
「ああ、約束だ」
木々が静かに揺れ、二人の間を柔らかな風が通り抜けていく。
まだ見ぬ我が子。
その小さな手を握る日を想像しながら、二人はいつまでも話し込んでいた。
その時の二人にはこれから先も、この穏やかな日々がずっと続いていくように思っていた。
夜の森が静かに揺れているのとは違う黒い影がどんどん近付いてきていると… 二人は夢にも思わなかった。