鏡と前世と夜桜の恋
「お父様… やだ蓮稀… 怖い… 」
蓮稀は雪美の手を強く握った。
「大丈夫だ、俺から離れるな」
二人は夜道を走った。
だが、雪美の足は次第に動かなくなりしゃがみ込む… 蓮稀は振り返った。
「背中に乗れ」
「でも… 」
「早く」
雪美は震える身体を背中に預け、蓮稀はそのまま走り出した。
月明かりのない山道を。
追手の声が、少しずつ遠ざかっていく。
やがて二人は、朽ちかけた小さな小屋へ逃げ込み、蓮稀は雪美を干し草の上にそっと降ろした。
「大丈夫か?」
羽織を脱ぎ、雪美の肩へ掛ける。
雪美は震えながら羽織を握った。
「な、何で…」
震える目には涙が溢れる。
「何で私が殺されないといけないの… 」
蓮稀は答えられなかった。
ただ、険しい顔で外を見ている。
遠くから声が響いた。
「どこへ行った!!」
「必ず探し出せ!」
「女を殺さねば、我らが滅びるんだ!」
雪美は蓮稀の袖を掴んだ。
「蓮稀… 」
その瞬間外から別の叫び声が聞こえた。
「や、辞めてくれ… 」
「殺さないで… 」
「助けて… 助け… 」
雪美は思わず小屋から飛び出て陰から声のする方を見た… そこには村人を容赦なく残虐する忍びたち。

「やっ… 」
雪美の口から悲鳴が出そうになった。
蓮稀が咄嗟に雪美を抱き寄せる。
「雪美、見るな!」
雪美は蓮稀の胸に顔を埋めた、ガタガタ震えて身体の震えは一向に止まらない。
「な、何が起こってるの… 」
「大丈夫だ」
「み、みんなが… 」
「今は俺を見ろ」
蓮稀は雪美の顔を両手で包み顔を近付けた。
「外を見ず、俺だけを見ろ」
雪美は涙で濡れた瞳で蓮稀を見つめ距離感に頬を赤くする。
「さ、さくが… 」
その名を聞いた瞬間、蓮稀の表情が揺れた。
「… そうだな」
「私には… さくがいるの… !!」
「分かっている」
蓮稀はそう言って、雪美を更に強く抱き締めた。
しかし――
二人の間には、言葉にできない感情が渦巻いていた。