鏡と前世と夜桜の恋
返事の代わりに、額へ、頬へ、首筋へと口付けが落ちていき、雪美は声を押し殺すように唇を噛んだ。
一度整え直した着物の襟が更に乱れていき… 月明かりに照らされた雪美を見つめ、蓮稀は一瞬だけ息を止めた。
「… 綺麗だ」
雪美の頬が一気に赤くなる。
「…み。見ないで//」
「無理だ」
蓮稀は小さく笑った。
雪美もまた、震える指で蓮稀の着物の襟に触れる。
「… こう、するの?」
「誰に男の着物の脱がせ方を教わった?」
からかうような蓮稀こ問いかけに、雪美は真っ赤になり恥ずかしそうに顔を背けた。
「し、知らない… //」
その横顔を見て、蓮稀は優しく雪美を抱きしめ… 二人の間にあった衣の隔たりが、一枚、また一枚と消えていく。
やがて雪美は、蓮稀の胸に額を預けた。
「… 蓮稀」
「うん」
「怖い… 」
蓮稀は答えず、ただ強く抱きしめ、愛す… その腕の中で、雪美は目を閉じ蓮稀を受け入れた。
蓮稀の動きは何も考えられず頭の中が真っ白になるほど優しく激しくて…
「ま、待っ… // 」
蓮稀はお構い無しに刺激を与え、雪美は声が漏れないように自分の着物を口に咥え必死で声を我慢したが、直ぐに達する。
肩で息をする雪美を見た蓮稀の心には雪美に対して更に愛おしさが溢れた。
「… 痛いかもしれない、ゆっくり息をしろ」
蓮稀に言われゆっくり息をしたその瞬間、蓮稀自身が雪美の中に入って来た。
「…… っ// 」
咲夜や申又とは明らかに違う刺激と快感に顔を歪める… 蓮稀と目が合えば下から蓮稀を見つめ、頬に手を伸ばし " 蓮稀… " と呼吸を乱しながら声を漏らす。
蓮稀は腰を動かしながら雪美を見つめ再び声が漏れないように唇を重ねる… しばらくすれば雪美は達し、蓮稀も達すれば中に出した。
二人の間にあった最後の境界を蓮稀は静かに崩した。それは、決して戻ることのできない一線…
雪美は蓮稀の胸元に顔を伏せ、乱れた息をゆっくり整えていた。
蓮稀は何も言わず天井を見つめている。
長い沈黙のあと。
「… すまぬ」
蓮稀が小さく呟き雪美は顔を上げる。
「… なぜ謝るの?」
蓮稀は答えなかった。
ただ、雪美から目を逸らすように背を向けた。蓮稀のその背中を見つめる。
雪美は自分の胸に手を当てると蓮稀の温もりが残っていた。
そして同時に――
雪美の咲夜への想いも消えることなく胸の奥に残っていた。
雪美を巡る残虐な夜は、忍び達が取り押さえられるまで続いた。
村人は保護されこの嵐は過ぎ落ち着いたが、二人の心の中だけは、変わらず嵐のように揺れ続けていた。