鏡と前世と夜桜の恋

「人を傷つけることを選んだのは、あいつらだ。雪美ではない」

雪美の瞳に、涙が浮かぶ。

「… 蓮稀 … 」

「もう、自分を責めるな」

蓮稀はそれ以上何も言わず、ただ、雪美の傍にいた。

その夜…

ようやく雪美に平穏な生活が戻った。騒ぎもなく誰かに追われることもなく、静かな夜だった。



雪美は布団の中で横になり、ゆっくりと瞼を閉じる。

隣には蓮稀がいた。

疲れ果てた雪美が眠りへ落ちていくのを見つめながら、蓮稀はそっと手を伸ばし雪美の頭を、優しく撫でた。

一度。

また一度。

まるで " もう大丈夫だ " と伝えるように。



「… おやすみ、雪美」



その声を聞いた雪美は、ほんの少しだけ微笑んだ。そして、蓮稀の言葉に救われるように、静かに目を閉じた。

その日、雪美は懐かしい夢を見た。

そこにいたのは――。

見覚えのある姿。







「… 鈴香ちゃん… ?」

雪美は、すぐにわかった。

鈴香だった。

鈴香は、何も言わず雪美を見つめていた。



そして優しく微笑んだ。
その笑顔は、どこか寂しそうだった。

鈴香は一通の文を雪美へ差し出した。

「もし、私が居なくなったら… 読んでね 」

雪美は、その文を受け取る。

それは、蓮稀との婚約が決まった数日後に鈴香から直接渡されたものだった… 文の存在を完全に忘れていた。



夢の中で鈴香は微笑み、まるでずっとこの時を待っていたかのようだった。

そして、夢はそこで途切れた。

「鈴香ちゃん…」

目を開けるが夜はまだ明けていない… 胸が、妙にざわついていた。

雪美は布団から起き上がり、引き出しを開けた。そこには、ずっと大切にしまわれていた一通の文があった。



震える手で文の封を開く。

中に書かれていたのは――。

『溝の中に宝物がある、探してね。分からなければ、頭が良い人に聞いてごらん?』

「… 溝の中… ?」

雪美は首を傾げた。

その声に、隣で眠っていた蓮稀が目を覚ます。

「どうした、雪美?」

「これ… 」

雪美は文を差し出した。
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