鏡と前世と夜桜の恋
その顔には、悲しみと怒りが入り混じっていた。
そして、静かに立ち上がる。
これは、ただの記録ではない、鈴香が残した最後の証… 蓮稀は夜が明けるとそのまま町奉行所に向かった。

「これを」
蓮稀は帳面を差し出した。
「… 亡くなった鈴香が残したものだ」
受け取った者が頁を開く。
蓮稀は静かに続けた。
「ここに書かれていること、すべて事実確認してほしい」
「… こ、これは … 」
言葉を失うほどの内容だった。
蓮稀は目を伏せる。
「鈴香が残したこの記録をおすず達の御仕置に加えろ」
それだけ告げると、蓮稀はその場を去った。
… 冷たい風が吹いている。
空を見上げても鈴香の姿はどこにもない。
けれど、あの帳面だけは残っていた、鈴香が生きていた証、鈴香が受けた苦しみを誰にも消させないために。
繰り返さぬよう蓮稀は、胸の奥で静かに誓った。
" もう誰も悲しませない "
鈴香が残した最後の言葉は、ようやく蓮稀に… 世に届いたのだった。