鏡と前世と夜桜の恋
「この者どもは共謀して数々の悪事を働き罪なき者を死に追いやり、更なる殺害を企てた。その罪極めて重し」
一呼吸置き、奉行は厳かに告げた。
「よって一家全員、死罪と申し渡す」
その瞬間、白洲に悲鳴が響き渡った。
「や、やだ… 」
陽菜は発狂しながら崩れ落ち、おすずは両手で顔を覆う。
申又はおかしいと何度も首を横に振り、藤川は砂の上に額をこすりつけていた。
「お許しください!どうか、どうか… 」
誰も彼らの声に耳を貸さず、奉行の表情も一切変わることはなかった。
「い、いやよ… 私はまだ咲夜さんを手に入れてないの!!まだ… まだ、何も終わってない!!!」
その隣で、おすずは派手な紫と紅を基調とした着物を大きく揺らしながら、奉行を睨みつけていた。
「ふざけるんじゃないよ!この私を誰だと思っているんだい、ここの責任者は私だよ!こんな裁き認めるものか!」
しかし、かつての威勢はもはや虚勢にすぎなかった。
奉行は冷ややかな眼差しを向けた。
「己の罪を悔いるどころか、なおもそのような口を利くか。連れてゆけ… 」
「お、お待ちください!」
声を上げたのは、申又だった。
陽菜の弟である申又は、乱れた着物の襟元を押さえながら必死に奉行を見上げた。
まさかこんな事になるとは… 顔には恐怖と焦りが浮かび、額には汗が滲んでいる。

「お、俺は姉や母の言いなりになっていただけです… すべての企てを知っていたわけではございません!どうか、どうかお慈悲を… 」
その言葉に陽菜が勢いよく振り返った。
「申又!あなた何を言っているの!?」
「俺は知らない、何も… 」
「家族でしょ!どうして一人だけ逃げようとするの!?」
「ゆきちゃんを躾けられなかったアンタが悪いのよ!他にも沢山アンタの思い通りにしてあげたのに… 裏切るの?」
「逃げるだと!?あ、姉上こそ… 今まで自分が何をしたのか分かっているのか!?咲夜しか見えておらず、今では村中の危険人物… 」
申又の声が震えながらも広間に響いた。