鏡と夜桜と前世の恋
雪美の想い


ーー 私が蓮稀と出会ったのは、雪美がまだまだ幼い幼少期の頃。



当時、6歳の雪美は沢山の蓮が綺麗に咲き誇り鯉のいる池で蓮を見ながら誰かを待っていた。







暫く待っても待ち人は来ず。



雪美は仕方なく来た道を引き返そうと川の横を歩いていると、前方から大名行列のような雰囲気の行列が近付いて来た。







「跪け!金貸しの分際で!」



雪美の姿を見つけた巨漢女 (おすず)は突然、ものすごい剣幕で雪美に暴言を吐く。



若い頃のおすずも豊満過ぎる体格から醸し出す威圧感と存在感は凄く…



その場に無理矢理座らされた雪美は土下座しろと言わんばかりにおすずに、地面に頭を押さえつけられる。



雪美の家系は金貸し屋。



当時、金貸し屋と聞くと一線置かれる時代でもあり勝手な偏見から娘になる雪美は、おすずに嫌われていた。



頭を思いきり地面に押し付けられ、顔が擦れてすごく痛い… 小さな雪美はやられるがままで何の抵抗も出来ず。



悔しい… なんでこの人にこんな事されなきゃいけないの。



とっても腹が立つ、言い返したいけど、相手は国家権力を握る町奉行所 (警察)の娘…



何よりおすずの体格差に勝てる気がしない。



「…この子になめた事してんじゃねえぞ」



跪かされたまま解放されるのを待っていると、雪美を跪かせて優越感に浸るおすずに対し怒る、低く優しい男の声が聞こえた。

< 33 / 112 >

この作品をシェア

pagetop