鏡と夜桜と前世の恋


駄目だ、このままだと蓮稀が何をするかわからない、咲夜は鈴香の体を降ろし、雪美に鈴香をお願いして蓮稀を追いかける。



「やだ… こんな… 」



牢獄に残った雪美は暫くの間、鈴香の体を抱きしめたまま離そうとはせず泣き続けた。



「鈴香ちゃん辛かったよね、こんな場所に… 酷いよ… どうしてあの人はこんな酷いことが出来るの… 」



涙を拭いた雪美は、蓮稀が鈴香に巻き付けた羽織を鈴香に綺麗に着させ直し、整えた後、蓮稀と咲夜の後を追うことを決意する。



ーー 雪美は確信していた。



" 鈴香ちゃんは自殺じゃない。殺されたのよ、あの人 (おすず) に "



こんなの許せない… 蓮稀お兄ちゃんは、鈴香ちゃんと幸せになって欲しかった。



鈴香ちゃんを大切にする蓮稀お兄ちゃん
蓮稀お兄ちゃんを大切にする鈴香ちゃん



二人の関係は雪美にとって憧れだった。
私はそんな二人に沢山可愛がって貰ってて…



鈴香ちゃんなんて私が子供の頃、うっかり川に落ちた時も咲夜より先に助けてくれたくらい。咲夜は俺が助けたかったのにって拗ねてたけど。



私を実の妹のように接してくれる、家族みたいな二人の愛情と温かさが大好きだった。



雪美の中の
甘くて苦い心の傷が疼き出す…



蓮稀お兄ちゃんは私にとって、心底幸せになって欲しいと願うほど大切な人なんだから……

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