鏡と前世と夜桜の恋
「ひゃっ… 」
温かな身体に包み込まれ、雪美は息を呑んだ。
耳元に咲夜の吐息が触れる。
「ま、待って?//」
「なんだよ」
「は、早いよ… !//」
振り向けば、咲夜は悪戯っぽく笑っていた。
「さっきは頷いただろ」
「そ、それは…!//」
「じゃあ、どうしてそんなに可愛い顔をするんだ?」
「か、可愛くなんか… //」
「へえ?」
咲夜の眉が、面白そうに上がった。
「俺には、ずいぶん可愛く見えるけどな」
雪美が言葉に詰まった、その隙に… 咲夜は雪美の手を引き、畳敷きの床へそっと押し倒した。
「きゃっ!」
「さ、さく!待ってってば!//」
咲夜は雪美のすぐそばに手をつき、逃げ道を塞ぐように身を屈めた。
その顔には、いつもの意地悪な笑みがある。
「… お前、さっきから待ってばかりだな」
「だ、だって… !// 」
「少しは俺の気持ちも考えろよ」
低く囁かれ、雪美は息を止めた。
ふと、咲夜は雪美の手元に目を留める。

「まだ持っていたのか」
「うん… 綺麗だから」
咲夜はハンカチをそっと取り上げると、雪美の掌へ戻した。
「潰さないように持っていろ」
「… え?」
「大事な花なんだろ?」
雪美は不思議そうに首を傾げた。
咲夜は答えず、彼女の額に軽く口づける。
続いて頬へ、そして、また唇へ。
その一つひとつが、雪美の心をかき乱していく。
「さ、さくの意地悪… // 」
「… 今さら気づいたのか?」
咲夜は笑った。
けれど雪美を見つめる眼差しはどこまでも真剣で、雪美は椿を握り潰さないよう、そっと手のひらを丸めた。
大切な花を守ろうとするほど、咲夜の存在が近くに感じられる。