鏡と前世と夜桜の恋
蓮稀と鈴香の祝言が正式に決まった日

家中は祝いの声で満ちていたはずだったが、1人の女の静かな決意が政条家の運命を狂わせ始めた…

「鈴香、どうゆう事だい?陽菜に暴言を吐いて川に突き落としたんだってね?」

低く響く声の主はおすず、その瞳は怒りに燃え、理を超えた感情を剥き出していた。


突然、祝いの席に冷たい沈黙が落ちる。

「わ、私は… 道を教えてあげただけなのに… ぐずっ… 」

陽菜は袖で目元を押さえ震える声でそう言った。わざとらしい嗚咽が座敷に響く… その横でおすずが涙を装いながら、娘の肩を優しく優しく抱いた。

「嫁入り前の私の愛娘に何を考えてるんだい!!」


おすずの怒鳴り声が響いた屋敷内は途端に空気が変わり祝いの笑顔は一瞬で凍る。

ざわめきが広がりその場にいた者達は皆、息を呑んだ。

「ふざけんな!!お前がゆきを… 」

血が逆流するような怒りが胸を突き上げ、思わず立ち上がった咲夜は陽菜を罵倒しようとするが、肩を押さえる手があった。


「やめろ、咲夜」

蓮稀の声は低く鋭かった。

「黙ってられるかよ!突き落とされたのはゆきだ!なんで陽菜が被害者ぶって… おかしいだろ!!」

蓮稀の瞳にも怒りと無力が入り混じっていた。誰もがこの親子の理不尽な裁きがどれほど恐ろしいか知っている… おすずは立ち上がり、扇を広げる。


その仕草は優雅でありながら冷酷そのもの

「陽菜を突き落としたのは鈴香、アンタしかいない。私の愛娘に手を出した挙句よくも政条家に泥を塗ったね」

その声には断罪の響きがあり真実など最初から求めていない、自分の思い通りにならなければ重罪だと。犠牲など厭わないそれがおすずのやり方…
< 41 / 141 >

この作品をシェア

pagetop