鏡と前世と夜桜の恋
ふと肩に重みを感じて隣を見ると、咲夜がいつの間にか戻って来ていて、雪美の肩にもたれ同じ様に眠っていた。

「さく!」

咲夜は眠そうに目を開ける。

「さくってばどこ行っ… 」

言葉の途中、咲夜は懐から小さな包みを取り出し雪美に手渡す… 咲夜が手渡したのは桜の飾りがついた可憐なかんざし。





「…え?」

「髪飾りは高くてな、かんざしで我慢しといてくれ」

照れくさそうに腕を組み目を逸らす咲夜。咲夜の優しさに雪美は微笑みながら、かんざしをそっと髪に挿した。

「…似合う?」

咲夜はゆっくりと目を開け、蔵の隙間から射し込む橙色の光に照らされながら言った。


「ん、似合う。形あるものはいずれ壊れる。でも、新しいものもきっと見つかる」

夕陽が2人の間を金色に染める。

真っ直ぐ見つめ真剣な表情の咲夜
… さくのこんな顔、初めて見た。

自然と頬が紅く染まる。

胸の奥で何かが静かに芽吹く音がする… 外では日が山の端に沈みかけ蔵の影が長く伸びていた。

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