優しく笑う君が好きだから

最悪

 たった10文字の文字の集まりを読んだ瞬間、息をするのを忘れるほどに固まった。そして、震えた。しかし、そんなことをしている暇なんであるわけがなくて、人生で1番の速さで走った。ここは、4階。長い階段を転びそうになりながら、1階まで駆けた。走っている時に何を考えていたのかなんて記憶にない。それほど、気が動転していた。そして、体育館裏についた。僕はこっそり、声のする方を覗いた。
「何優等生ぶってんだよ。男なんて味方にすんの辞めろよ。誰もお前のことなんて相手にしたくねえんだよ。きもいんだよ。弱いんだよ。まじで死ねよ。消えろ。目障りなんだよ。」
見ているだけで辛い、地獄のような世界がそこには広がっていた。藤原さんたち4人に対して早乙女さんは1人だ。あまりにも卑怯すぎる。
 気づいたら体が動いていた。早乙女さんに向けられた拳を僕の背中が受けていた。女子の力を舐めていたのかもしれない。思っていた以上に痛かった。僕の正面には驚いている早乙女さんがいた。振り返って、藤原さんを見た。とても、不満そうにこちらを見ている。それは僕だって同じだ。ただ不満ではない。怒りという言葉が1番いいのかもしれない。
「…なよ。」
もう名前なんて口にしたくないあの4人組は『は?』と口を揃えて言った。僕は我慢できなくて、声を荒らげた。
「死ねなんて簡単に言うなよ!!早乙女さんがお前らに何したって言うんだよ。いじめられる方が元は悪い時だってある。だけどよ…だけどよ!結局いじめた方が全部悪いんだよ。だから、もうこんなこと辞めてくれよ。あと、早乙女さんと一緒にいるのは僕が、一緒にいたいからだ。」
思っていたことを全部とは言わないが、ぶちまけてしまった。あいつらの次に放つ言葉なんて聞きたくなかった。だから、気づいたら早乙女さんの手を握りその場を去っていた。僕は頭よりも体が先に動いてしまうタイプなのかもしれない。なんとも都合のいいやつだと我ながら苦笑する。
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