優しく笑う君が好きだから
 そして、高校の近くにある公園に着いた。ここは密かに僕のお気に入りの場所だ。高校の近くとは言え丘の上にあるため、近所の子供がたまに来るくらいだ。僕らは、2つしかないブランコに腰掛けた。やっと落ち着いて、早乙女さんの方を見ると、泣いていた。
「勝手なことしてごめん」
 僕は、心から思っていたことを謝った。やっぱり早乙女さんは驚いている。
「やっぱり僕語彙力くそだよね。」
と苦笑し、照れ隠しをする。
「僕さ、早乙女さんのこと好きなんだ。」
本当に話ををまとめるのが下手だ。
「それ告白?」
くすくす笑っている早乙女さんを見て、やらかしたと思った。
「急に謝ってきたと思ったたら、告白してくるし。でもね、そーゆー黒木くんの面白いとこ、私好きだよ。」
僕は顔が熱くなった。きっと今りんごみたいに真っ赤になっていると思う。恥ずかしすぎる。
「面白いとこだけじゃなくて、さ。優しいところも、勇気があるところも、全部全部大好きだよ。」
まさかの逆告白に僕は固まる。もう早乙女さんと目を合わせるのでさえ、今は出来ないほどに、嬉しかった。
「今日助けてくれてありがとう。迷惑だなんて思ってないよ。」
そんなことを思ってくれていたなんて、僕は感動した。感動というか、もう言葉に表せない感情だ。
「そっか。こちらこそありがとう」
僕も『ありがとう』を言わないといけないと思った。感謝を伝えたかったから。それを伝えることにした。
「早乙女さんの優しく笑う顔大好きなんだ。僕中学生の時に父親が死んでさ。」
 この話を誰かにするのは、きっと初めてだ。緊張する心を抑えながら、あえてゆっくり、一つ一つの言葉を大切にするように話した。
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