甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
人垣を外れたところでチャップリンの格好をした人が子供達にお菓子を配っていた。イケメンチャップリンと呼ぼう。その彼が、私の側で立ち止まってパントマイムをしだす。だが、あまりの下手さに思わず笑っていた。
すると「やっと、笑ってくれた」と、嬉しそうに胸ポケットに入れていた小さなうさぎのぬいぐるみを私にプレゼントしてくれたのだ。
その時のうさぎのぬいぐるみは今も大事にしていて、枕元で一緒に寝ている宝物だ。
そのチャップリンが、高山 健斗、その人だと知ったのは、アシスト企画に入社してからだった。
イケメンチャップリンの影響から、私は再就職するなら人々を笑顔にする仕事についてみたいと思い、たまたまもらったチラシからアシスト企画の名前を見つけ、飛び込んだ先に彼がいたのだが、あの時のことを話題にもできず、今に至る。
上司としての彼は尊敬できて、厳しいながらも、ふとした時の気遣いや思いやりを忘れない男。
だが、誰もが見惚れる顔立ちで、女性に事欠かない男。
こんな男は嫌いだと言い続け足掻いていた。
本気にしない。
女を抱く為に、甘い言葉なんていくらでも出てくるのだろう。
向こうも不感症の女に欲情も失せ、諦めるだろう…