青い鳥はつぶやかない 堅物地味子の私がベリが丘タウンで御曹司に拾われました
 目をギュッとつむったままの史香を見下ろしながら自分を押し当てたその瞬間、熱い蜜に絡め取られた蒼馬は史香と一つにつながっていた。

 全身に媚薬を塗られたように肌がざわめく。

 ――嘘だろ。

 史香からあふれ出す未知の快楽に包まれ、蒼馬は身動きが取れなかった。

 一瞬にして頭の中が真っ白になる。

 日差しを浴びて輝く塩湖に放り込まれた遭難者はただただ女にしがみつくしかなかった。

 駄目だ。

 動いたら、終わる。

 こんなことって……。

 擦れ合わせる動作など、まったく不可能だった。

 腹筋の力だけで刺激する。

 史香の中で蒼馬がピクリと動く。

「あっ……」

 こぼれ出た女の吐息が蒼馬の耳をくすぐり、快感の針が敏感な部分を一層刺激する。

「……うっ、あ……」

 蒼馬の動きに操られるように言葉にならない声が漏れる。

 体をより一層密着させると、背中に回された女の腕が蒼馬の腰を抱え、束縛を強める。

 こぼれ出る愛の吐息に耳を傾けながら、引きつるほどに腹筋を収縮させ、蒼馬はかろうじて耐えていた。

 ――間違いない。

 俺は見つけたんだ。

 俺だけの宝物を。

 失うわけにはいかない。

 この世のあらゆるものを買える財力があっても、絶対に手に入れることができないかけがえのない宝物をつかんだのだ。

 俺が見つけ出すのを待っていてくれたんだろ。

 蒼馬は閉じたままの女の瞼をじっと見つめた。

「史香……」

 俺を見てくれ。

 一目だけでいい。

 俺を見てくれ。

 君が教えてくれたんだ。

 心の中にぽっかりと空いた寂しさを満たすあたたかな愛を俺に教えてくれたんだ。

 君は自分を平凡な女だと思っているけど、そんなことはないんだよ。

 蒼馬は史香の耳にそっとささやきかけた。

「幸せが、見えるよ」

 はっきりと今、俺はそれをこの目で見つめている。

 間違いない。

 これが幸せの形なんだ。

 俺が探し求めていた愛の形なんだ。

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