青い鳥はつぶやかない 堅物地味子の私がベリが丘タウンで御曹司に拾われました
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一月後半になってもまだ蒼馬は史香と連絡が取れずにいた。
正月明けの里桜の事件も佐久山から聞いていたし、連絡先は伝わっているはずなのに、向こうからは何の連絡もない。
さすがに蒼馬は焦っていた。
俺は振られたのか?
ただの遊びだと思われているのか。
たしかに、お試しとは言ったが、それは相手の心理的ハードルを下げるためであって、決して軽い気持ちではなかったのに。
このままただ連絡を待っていても進展はないだろう。
かといって、無理矢理押しかけて嫌がられたら、それこそ終わりだ。
帰国してからも、年始の挨拶回りや仕事でスケジュールが詰まっていて気の休まる暇がなかった。
長いフライトで眠ったことが今となっては唯一の休息だった。
――史香に会いたい。
その思いだけがつのっていく。
今日も蒼馬は各国大使を招いたレセプションに参加していた。
「蒼馬、久しぶりだな」
「ああ、これはマウリージョ大使」
「肩書きで呼ぶのはよしてくれよ。アメリカでは一緒に学んだ仲じゃないか」
「君も出世したものだな」
「人材不足なんだろ」
大使が書記官に蒼馬と握手した写真を撮らせる。
「SNSに掲載してもいいだろ。日本の若きビジネスマンとの絆を宣伝したいんでね」
「ああ、もちろん、かまわないよ」
蒼馬はすでに経済誌などで写真が出回っているし、会社としても著名人との交流は宣伝になる。
マウリージョ大使は幼少期に親の仕事で日本で暮らし、高校から大学院まではアメリカで学んだという経歴の持ち主で、蒼馬とは大学時代に交流があった。
流暢な日本語でSNSに投稿することから『バズる若きイケメン大使』として知られている。
「どうだい、蒼馬、もういいねが千を越えたぞ」
スマホの画面を見せながらシャンパンのグラスを掲げる。
蒼馬もグラスを掲げて乾杯に応じた。
――史香もこれを見てくれれば。
見ていたからといって連絡をくれるものでもないだろうが、一縷の望みにもすがりたくなる。
レセプションからの帰宅途中にリムジンがツインタワーの横を通る。
佐久山は里桜の件で史香から連絡をもらっている。
ならば、佐久山に連絡先を聞けばいいのではないか。
それとも、代理で連絡をしてもらうようにするべきだろうか。
「佐久山……」
「はい」
「いや、なんでもない」
「さようでございますか」
佐久山は深くたずねては来ない。
すべてを理解しているからだろう。
信頼できる執事というものは、こういうときに困る。
まさか、里桜に聞くわけにもいくまい。
完全に手詰まりだ。
蒼馬は前髪をかき上げ、額に手を当てた。
――どうしたらいい?
愛することが罪だというのなら、愛されないことは罰なのか。
だが、いったい俺が何をしたと言うんだ。
俺はただ……史香を愛しただけじゃないか。