青い鳥はつぶやかない 堅物地味子の私がベリが丘タウンで御曹司に拾われました

   ◆

 一月後半になってもまだ蒼馬は史香と連絡が取れずにいた。

 正月明けの里桜の事件も佐久山から聞いていたし、連絡先は伝わっているはずなのに、向こうからは何の連絡もない。

 さすがに蒼馬は焦っていた。

 俺は振られたのか?

 ただの遊びだと思われているのか。

 たしかに、お試しとは言ったが、それは相手の心理的ハードルを下げるためであって、決して軽い気持ちではなかったのに。

 このままただ連絡を待っていても進展はないだろう。

 かといって、無理矢理押しかけて嫌がられたら、それこそ終わりだ。

 帰国してからも、年始の挨拶回りや仕事でスケジュールが詰まっていて気の休まる暇がなかった。

 長いフライトで眠ったことが今となっては唯一の休息だった。

 ――史香に会いたい。

 その思いだけがつのっていく。

 今日も蒼馬は各国大使を招いたレセプションに参加していた。

「蒼馬、久しぶりだな」

「ああ、これはマウリージョ大使」

「肩書きで呼ぶのはよしてくれよ。アメリカでは一緒に学んだ仲じゃないか」

「君も出世したものだな」

「人材不足なんだろ」

 大使が書記官に蒼馬と握手した写真を撮らせる。

「SNSに掲載してもいいだろ。日本の若きビジネスマンとの絆を宣伝したいんでね」

「ああ、もちろん、かまわないよ」

 蒼馬はすでに経済誌などで写真が出回っているし、会社としても著名人との交流は宣伝になる。

 マウリージョ大使は幼少期に親の仕事で日本で暮らし、高校から大学院まではアメリカで学んだという経歴の持ち主で、蒼馬とは大学時代に交流があった。

 流暢な日本語でSNSに投稿することから『バズる若きイケメン大使』として知られている。

「どうだい、蒼馬、もういいねが千を越えたぞ」

 スマホの画面を見せながらシャンパンのグラスを掲げる。

 蒼馬もグラスを掲げて乾杯に応じた。

 ――史香もこれを見てくれれば。

 見ていたからといって連絡をくれるものでもないだろうが、一縷の望みにもすがりたくなる。

 レセプションからの帰宅途中にリムジンがツインタワーの横を通る。

 佐久山は里桜の件で史香から連絡をもらっている。

 ならば、佐久山に連絡先を聞けばいいのではないか。

 それとも、代理で連絡をしてもらうようにするべきだろうか。

「佐久山……」

「はい」

「いや、なんでもない」

「さようでございますか」

 佐久山は深くたずねては来ない。

 すべてを理解しているからだろう。

 信頼できる執事というものは、こういうときに困る。

 まさか、里桜に聞くわけにもいくまい。

 完全に手詰まりだ。

 蒼馬は前髪をかき上げ、額に手を当てた。

 ――どうしたらいい?

 愛することが罪だというのなら、愛されないことは罰なのか。

 だが、いったい俺が何をしたと言うんだ。

 俺はただ……史香を愛しただけじゃないか。

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