紫苑くんとヒミツの課外授業
「ほら、すぐ子どもみたいに泣く。だから、思ってることも言えなかったんだよ。聖来を泣かせたくはなかったから」
私は、聖来の目元の涙を指で拭ってあげる。
聖来はいつも偉そうだけど、意外と繊細で。
傷つきやすい子だから。
「おばあちゃんも、私や聖来にはいつも笑顔でいて欲しいってよく言ってたし。おばあちゃんが悲しむようなこと、私にはできなかった」
「うう……っ」
「それに聖来は、私にとって……たった一人の大切な妹だから」
「咲来ちゃん!」
隣に座る聖来がシートベルトをしたまま、こちらへと抱きついてくる。
「ごめん。咲来ちゃんはわたしにとっても、たった一人の大切なお姉ちゃんのはずなのに。今まで沢山、傷つけてごめんなさい」
「良いよ。今、こうしてちゃんと謝ってくれたし。これから気をつけてくれれば、それでいいから」
私に抱きついている聖来の背中を、ポンポンと優しく手で叩いてやる。
この日は、久しぶりに妹とも本音で話せた気がして。私は自然と笑みがこぼれた。