乳房星(たらちねぼし)−1・0

【誰でもいいわけないじゃない】

時は、日本時間3月23日の午後1時半頃であった。

またところ変わって、四国中央市三島朝日《しこくちゅうおうしみしまあさひ》にあるグランフォーレ石松(ブライダルホテル)にて…

この日は、一恵《かずえ》の遠い親類の家の男の子の挙式披露宴が挙行されたので、福也《さちや》さんの実家《いえ》の家族たちが出席していた。

場所は、エントランスホールの中にあるカフェテリアにて…

カフェテリアには、福也《さちや》さんと章弘一恵夫婦《あきひろかずえ》と麻里子温大夫婦《まりこはると》と智之《ともゆき》と沖縄でお会いした榎原市長《もとしちょう》の夫婦と榎原市長《もとしちょう》の奥さまの親類のメイゴとメイゴの子どもふたりが座っていた。

メイゴの子どもは、4歳と2歳の男の子であった。

メイゴは、前夫《おっと》からDVの被害を受けたことが原因で榎原市長《もとしちょう》の家に逃げ込んだ。

榎原市長《もとしちょう》の夫婦は、メイゴを助けるために福也《さちや》さんとサイコンさせると訣心《けっしん》した。

一恵《かずえ》は、福也《さちや》さんに対して榎原市長《もとしちょう》のメイゴを紹介した。

「福也《さちや》、紹介するわよ…榎原市長《もとしちょう》さんのメイゴさんの才之原《さいのはら》やよいさまよ。」
「はじめまして…」

福也《さちや》さんは、ものすごくかたい表情であいさつをかわした。

榎原市長《もとしちょう》は、ニコニコ顔で福也《さちや》さんに言うた。

「福也《さちや》さん。」
「はい?」
「この前、沖縄のゴルフ場でお会いした時にキャディーを務めていたね。」
「はい。」

福也《さちや》さんは、コチコチかたい表情で受け答えをした。

榎原市長《もとしちょう》は、ニコニコ顔で福也《さちや》さんに言うた。

「福也《さちや》さん、どうしたのかな?」
「なんでしょうか?」
「きょうは、福也《さちや》さんのためにセッティングしたのだよ。」

福也《さちや》さんは、ものすごく怒った表情で言うた。

「セッティングの意味が分からない!!」

端にいた一恵《かずえ》がおたついた表情で福也《さちや》さんを必死になだめた。

「福也《さちや》!!」
「なんや!!」
「なんで榎原市長《せんせい》に対して怒った表情で言うのよ!!」
「オレのためにセッティングしたと言う意味がわかんねーんだよ!!」
「福也《さちや》!!…榎原市長《せんせい》…すみません…」

一恵《かずえ》は、榎原市長《もとしちょう》に対してペコペコと頭をさげてあやまった。

その後、一恵《かずえ》は福也《さちや》さんに対してわけを説明した。

「福也《さちや》!!」
「なんや!!」
「うちは非常事態が発生したのでものすごく困っているのよ!!」
「非常事態ってなんや!?」
「福也《さちや》が結婚しないと、家がなくなるのよ!!」
「家がなくなるから結婚しろだと!!」

一恵《かずえ》は、気が狂いそうな声で麻里子温大夫婦《まりこはると》に言うた。

「あんたたち!!」

温大《はると》がものすごくめんどい表情で『義母《おかあ》さま〜』と言うたので、一恵《かずえ》はものすごく怒った声で言うた。

「今回の原因を作ったのは久義《ひさよし》よ!!」

温大《はると》は、ものすごくめんどい表情で言うた。

「なんで久義《ひさよし》ばかりをせめるのですか?…久義《ひさよし》はまだ小さいから…」

章弘《あきひろ》は、温大《はると》に対してミネラルウォーターが入っている小さなタンブラーを投げつけながら怒鳴った。

「口答えするな!!温大《クソアホンダラ》!!」

タンブラーは、温大《はると》の胸元にぶつかった。

温大《はると》が反抗的な目つきをしていたので、一恵《かずえ》は怒った声で温大《はると》に言うた。

「温大《あんた》カタの実家《いえ》の親きょうだいはなにを考えて生きているのよ!!」

一恵《かずえ》からボロクソに言われた温大《はると》は、ものすごく煮えきらない表情を浮かべた。

章弘《あきひろ》は、福也《さちや》さんに対して困った表情で言うた。

「福也《さちや》、温大《クソアホンダラ》のガキがよその家の美術品をわやにしたのだよ…2週間ほど前に…時価1億円の絵画《え》を久義《ひさよし》がけったボールが当たって…わやになったのだよ…他にも…久義《ひさよし》はよその家に勝手に入ったトラブルを繰り返していたのだよ…その時も…よその家のものを壊したのだよ…被害額は6億円だよ。」
「6億円…」

一恵《かずえ》は、ものすごくつらい声で言うた。

「そんな超大金を用意できるゆとりは、家にはないのよ…」
「だから結婚しろと言うのか!?」
「榎原市長《せんせい》が6億円を出してくださるといよんよ…」
「なんで人さまの家のおカネを頼るのだよ!!」
「他にクメンできる方法がないのよ!!家と土地を売却しても、まだ足りないのよ!!」

榎原市長《もとしちょう》は、ニコニコ顔で言うた。

「福也《さちや》さん、実家《いえ》を助けるために受けたらどうかな…」
「どうしても結婚しろと言うのですか!?」
「福也《さちや》さんに好きな人がいるのであれば、すまないけど、別れてくれる?」

別れろって…

どういうことですか?

福也《さちや》さんは、キョトンとした表情でつぶやいた。

この時、福也《さちや》さんの脳裏に福岡空港のロビーでゆかさんからボロクソに言われたことを思い出した。

『あんたは、結婚して家庭を持つことに向いてへん…ううん…あんた自身が結婚に向く姿勢がないわよ!!』

結婚に向く姿勢がない…

どういうことだよ…

福也《さちや》さんは、ゆかさんからさらにどぎつい言葉を言われたのを思い出した。

『あんたはそなな生ぬるい気持ちで、家族を守ることができるの!?…家族に不測の事態が発生した時に、きちんとタイショできるの!?」

できるわけないよ…

福也《さちや》さんは、さらにその上にゆかさんから言われたどぎつい言葉を思い出した。

『うちのまわりの友人たちも恋愛結婚した夫婦はいたわよ…せやけど、7〜8割の夫婦がリコンに至ったのよ…理由は言わないけど…』

福也《さちや》さんは、ひどくコンワクした表情を浮かべていた。

福也《さちや》さんが榎原市長《もとしちょう》に対してどう答えようかと悩んでいた時だった。

智之《ともゆき》がとっぴょうしもないことを言うた。

「ぼく、家を出る!!」

麻里子温大夫婦《まりこはると》は、おどろいた声で言うた。

「智之《ともゆき》〜」
「智之《ともゆき》、どうしたのだ!?」

智之《ともゆき》は、ものすごくコーフンした声で言うた。

「ぼく、大学やめて防衛大学校に行く!!」

智之《ともゆき》は、今から4ヶ月前に温大《はると》から『大学へ行かないのだったら防衛大学校に入るてつづきを取るぞ!!』と言われた。

大学を休学した状態が長々とつづいていたので、智之《ともゆき》はひどく苦しんでいたと思う。

智之《ともゆき》が言うた言葉に対して、榎原市長《もとしちょう》は困った声で言うた。

「智之《ともゆき》くん…気持ちは分かるけど…君自身がギセイになることはないと思うけど…」

智之《ともゆき》は、ものすごくコーフンした声で言うた。

「ぼくは本気です!!父さんが防衛大学校へ入学するてつづきを取ったことを聞いた時はいやだと思った!!…だけど、ずるずると休学を続けていたらだめになるから防衛大学校へ転向する方がいいと気がついたのです!!」

榎原市長《もとしちょう》は、ものすごく困った表情で言うた。

「それだったら、フクガクしたらいいと思うよ…せっかく入学できた大学をやめるのはもったいないよ〜」

智之《ともゆき》は、よりひどくコーフンした声で言うた。

「せっかく入学できた大学にいたらダメになるのです!!自立できなくなるからダメなのです!!」
「だけどね〜」
「ほんとうにダメになります!!ぼくは家を出てよそへ移りたいのです!!」
「よそへ移りたいのだったら、大学を卒業したあとでもいいと思うよ〜」
「それはダメです!!」
「どうしてダメなのかなぁ〜」
「和真《かずま》は私立高校《メートク》やめてジエータイに行きました!!だからぼくも大学をやめて防衛大学校から幹部自衛官を目指すと訣意《けつい》を硬《かた》めました!!」
「ほな、大学はどうするのだよ〜」

麻里子《まりこ》は、ものすごくコーフンした声で言うた。

「榎原市長《せんせい》、智之《ともゆき》は家を出て幹部自衛官になると訣意《けつい》したのです!!和真《かずま》もガッコーを休んでばかりの日がつづいたからガッコーをやめて陸上自衛隊へ入隊したのです!!…久義《ひさよし》が犯したあやまちは、智之《ともゆき》と和真《かずま》に支給されたおカネの中から少しずつ払います!!…うちと主人も、働いて稼いだ分で少しずつベンショウしていきます!!」
「そんなに痛みを押し付けなくてもいいじゃないか…」

福也《さちや》さんは、あきらめ顔で言うた。

「オレ…休職金で支給された3億円を…久義《ひさよし》が犯したあやまちをつぐなうために使うことにしたよ…」
「福也《さちや》。」
「姉さん、それでいいだろ…」
「姉さんはそれでもいいけど…あんたはいいの?」
「オレはいいよ…」

福也《さちや》さんが言うた言葉を聞いた榎原市長《もとしちょう》は『そこまで言うのだったら、言うことはないけど…』と言うた。

榎原市長《もとしちょう》がセッティングしたお見合いの席は、智之《ともゆき》が発した言葉が原因でワヤになった…と言うことにしておく。
< 165 / 240 >

この作品をシェア

pagetop