乳房星(たらちねぼし)−1・0

【シェルブールの雨傘】

時は、フランス時間9月4日の朝7時頃であった。

ところ変わって、南仏ニースのコートダジュール空港のターミナルビルにあるVIP専用のロビーにて…

A班のメンバーたちは、専用機の時間調整が終了するまでの間ここにいた。

A班のメンバーたちは、ロビーで待機している間もお仕事をつづけた。

この時、ゆかさんのスマホに奈保子《なおこ》から国際電話《コレクトコール》がかかってきた。

電話の応対をしているゆかさんは、ひどくいらついた声で受話器ごしにいる奈保子《なおこ》に言うた。

「奈保子《なおこ》さん!!国際電話《コレクトコール》は着信側に大きな負担がかかるからやめてと言うてるのになんで分からんのよ!!…今、うちらはニースの空港にいるのよ!!…奈保子《なおこ》さん!!うちらがいる場所は朝の7時過ぎよ!!もしもし!!ひとの話を聞いてよね!!」

またところ変わって、今治市喜田村《きたむら》の済生会病院にて…

奈保子《なおこ》は、ものすごく悲しい声で受話器ごしにいるゆかさんに言うた。

「もしもしゆかさん…義母《おかあ》さまがまた吐血したのよ…(最大血圧が)一時40台に下回ったのよ!!…今、輸血している最中よ…きのうまでは安定していたわよ…もしもし!!」

ゆかさんは、ものすごく怒った声で言うた。

「うちかてゆきのそばにいてあげたいねん!!せやけど、明日以降もスケジュールがぎっしりと詰まっているのよ!!おねーちゃんもゆいもおとーちゃんうちも、日本に帰ることができんのよ!!なんでわからないのよ!!わがまま言われん!!」

(ガシャーン!!)

思い切りブチ切れたゆかさんは、電話をガシャーンと切ったあと全身をぶるぶると震わせた。

(ゴーッ…)

それから300分後であった。

A班のメンバーたちが乗り込んだ専用機がニース・コートダジュール空港から飛び立った。

9月4日以降もスケジュールがぎっしりと詰まっているので休みは1日もない。
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